展示期間:2025年7月12日(土)~11月9日(日)まで
終戦から80年という節目の年をむかえ、長い戦争の時代を生きた文学者室生犀星の姿を見つめます。
戦争の足音、勝利、熱狂、統制、欠乏、疎開、敗戦・・・。日中戦争から太平洋戦争へと戦局が進むなか、否応なしに国家と結びつき、変化を余儀なくされた文学者たち。犀星もまた時代の渦に巻き込まれ、時局に無関心でいることもあらがうこともできず、ゆれ動いていました。この時代に何を書くべきなのか、発表の場が失われていくなかでどうやって生き残るのか。戦争詩を書いたかと思えば命の尊さを説き、日本の古典に題材を求める一方で銃後の暮らしを淡々と描いた犀星。ただ変わらずあったのは真摯に文学と向き合う姿勢でした。
私は私の文学だけを益々深くそだてることを忘れないようにしたい、私が生きて役に立つことはこの文学をいつくしむことだけである。(「文学は文学の戦場に」)
時代に翻弄されたひとりの文学者として、また生活者として犀星が何を思い、どう生きたのか、当時の作品や出版物でたどります。